萱アートコンペ2019 10/5~10/27

Tatsuki Tsukada Solo Exhibition

塚田辰樹 展 「木口木版」
2019年4月7日(火)〜4月29日(月)
9:oo~17:00 (無休)
RAUM戸倉宿・ギャラリーBlanc

*萱アートコンペ2018にてBlanc賞を受賞した作家が個展開催するものです。


塚田辰樹 tatsuki tsukada

1986 年長野県生まれ東京都在住
印刷物の制作会社へ勤務しながら版画を制作中
2005-2009 年 東北芸術工科大学洋画コース入学、卒業
2014 林檎たちのマスカレェド展(デザインフェスタギャラリー/東京)
2015 D15(フラットファイルスラッシュ/長野)
2015 「紙に鉛筆」展(フラットファイルスラッシュ/長野)
2016 「塚田辰樹」展 / トポス高地(アリコ・ルージュ/飯綱)
2016 干支・酉展2016(ギャラリーkanon)
2017 私の想い本展(ギャラリーkanon)
2017 萱アート展(アートギャラリーBlanc(ブラン))
2018 Nagano Art File / FLATFILE「旅するNAF」
2018 信州版画展
2018 萱アートコンペ「Blanc賞」受賞
2019 塚田辰樹展/Gallery Blanc/戸倉

    私の使用する木口木版は、木材の年輪のある面、木口面を彫り進める技法です。西洋木版とも呼ばれ、主に黄楊、椿などの硬い木材が選ばれます。
    細密な表現ができることが特徴で、一度黒く染めた版面を、ビュランという彫刻刀で彫っていきます。
    版材の特性上、大きな作品が少ないことも特徴の一つです。木材の入手が難しいこと、加工が大変なこと、細密に彫り進める場合時間がかかってしまうことなど、理由はさまざまです。
    本来この技法は、西洋で本の挿絵を印刷するために誕生しました。たとえば動物・鳥類図鑑や童話、叙事詩の挿絵が有名です。他の印刷技術におされてすぐに衰退を迎えてしまい、決して長い歴史があるわけではないですが、小さな世界であっても無限の世界の広がりを伝えるこの技法は、現在でも見る者の多くを楽しませています。
    日本にも、明治時代に木口木版が伝わり、新聞の画像や付録、広告を掲載するための技術として広まりました。しかしその技術もすぐに写真製版へ代替わりします。その後は印刷技術としてではなく、創作版画運動の後、昭和に入ってから版画家 日和崎尊夫によって復活します。そして現在では、多くの作家が現代版画として作品を生みだしています。
    版画は当時、新聞や書籍の最新技術であったことで、テレビやインターネットのようなメディアの役割をしていました。現在はツイッターやインスタグラムなどのSNSによって、自分たちが情報を発信することができます。メディアとしての「技術」から、創作版画の「表現」へ代わったように、私たちがメディアで表現することができる時代です。そして情報を受け取る側は、多様な価値観に触れることができるようになったといえます。
    ただ、あふれかえる価値観や意見、経験に手軽にアクセスできることが、必ずしも良いとはいえません。他者の意見を目にすることが多くなったことで、それらが自分の考えた自分の意見であると錯覚を起こしている人が増えています。結果的に同じような根拠と意見に落ち着いてしまい、SNS上の人格に「傾向」ができ始めているのです。
    そしてそれは、自分を持ちたい、なにかに打ち込んでいたい、所属していたいという意思の表れです。時流に流され、価値観も変化し、身の回りの風景も変化していく中、どうにか信じるものを、自分の手元へ引き寄せておきたいという意思だと考えています。
    私は木口木版の技法で、旅先で出会った風景や、残したい記憶の断片を、版に刻みつけようと思っています。山道を歩いていて感じる生命の気配、近所を歩いていて目についた光景。周囲との折り合いのつかない心境。そういった、何気ないが気に留めずにはおれなかった、あふれ出るような感情を大切にしたいのです。そうすることで誰の意志でもない、仮想でもない、確かな記憶の手触りを、小さな版画として手元に引き寄せていたいのです。

    2019/04/5 塚田辰樹

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